藤崎孝敏の絵と詩
裸婦
繋がれた驢馬は
くいの周りをぐるぐると廻っている
縄がくいに巻きついて
そして 驢馬は身動きとれなくなる
しばらく驢馬は自分のおかれた立場に困ったような
顔をしているが
そのうちそのことを忘れてしまう
ふと 偶然のように
彼は逆の方向へ廻りだす
そして 再び同じことを繰り返す
繋がれた彼の一日はそうして暮れてゆく
遥か夕暮れの空には
美しい生き物が住んでいるような
気がする。
Cauvine
九月の黄昏の営みが降りて来る 降りてゆく |
眠る犬 |
俺はカフェのコントワ−ルにいる
年老いたマダムが
俺の横に来てビールを頼む
サーヴィスは彼女を嫌っている
彼女にテーブルでひとりで飲めと叫ぶ
俺は知らない
なぜ彼女が嫌われているのか Cauvine
ジプシーの丘
私の死ぬ時には
小高い丘の上の雨上がりに
虹の立つことであろう
季節は終わりの旅の途中であろう
昼下がりの田舎町の裏通りには
ゆるやかに陽が下りて少女たちのはしゃぐ声が
通りを駆け抜け
太陽が麦わら帽子を被る頃だろう
そして私は
心懐かしき黄昏を
窓辺に咲かせ
眠りにつくことだろうCauvine
裏通り